インバウンドガイド日記 vol.22『ヒトとヒト~記憶に残るもの~』

インバウンドガイド日記 vol.22『ヒトとヒト~記憶に残るもの~』

2025年06月11日 8時45分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

驚くべき速さで進化しているAI。

観光分野にも、さまざまな影響や恩恵をもたらしています。

ご存じのとおり、交通機関や観光施設の多くは、スマホひとつでチケットの予約から利用まで完結します。

また、見知らぬ街でも、地図アプリのおかげで、ほとんど迷うことなく目的地にたどり着ける時代になりました。

今や、スマホに話しかけるだけで、道案内はもちろん、その土地の歴史や文化まで詳しく教えてくれます。 指で検索する必要さえないのですから、本当にすごい時代になったと感じます。


今日のひとこと

AIのほうが、人間のガイドよりも、膨大で詳細な説明ができるのは間違いありません。
それでも多くの方が、時間とお金をかけて旅に出るとき、「現地の人と触れ合って、自分だけのオリジナルな体験をしたい」という思いでいらっしゃるはずです。

そして、「現地のヒト代表」のプロのガイドとしては、「ガイドをつけてよかった!」、欲をいえば、「Nori がガイドでよかった!」と、心から思っていただけるよう、毎回、一期一会の思いで丁寧に向き合うことを心がけています。

I’d love to share local tips and stories that only we, the locals, can tell you.
現地の私たちならではの情報をお伝えさせていただきますね。

This spot isn’t well-known yet, but it’s become popular among us recently.
まだあまり知られていませんが、最近、これ(ここ)は私たちの間で人気が出てきています。

If it becomes a special memory for you, that would make me / us really happy too.
あなたにとって特別な思い出になれば、私(たち)も本当にうれしいです。
※ホテルや店舗などチームで伝える際は “us” のほうが自然です。

インバウンド英語なら職業別英会話をご予約ください!

私たちガイドの業界では、コロナ禍より前、AIが台頭し始めた頃から、

「もう人間のガイドは必要なくなるのでは?」という話題が、あちこちで危機感を持って語られてきました。

そんな中、世界中が未曾有のパンデミックを経験し、日本が諸外国に続いて水際対策を撤廃したのは、2023年4月29日。

たった2年前のことだなんて、信じられません。まるで遠い昔のような、不思議な感覚です。

コロナ禍の最中、仕事をすべて失ったであろう私を心配して、以前ご案内したお客様たちがメッセージをくださったこともありました。

そして世の中が落ち着いてからは、再び日本を訪れてご依頼くださったり、ご友人をご紹介くださったり…人のあたたかさが身に沁みる日々でした。

コロナ明け初のツアーを終えたときは、お客様に楽しんでいただけた喜びと、久しぶりのガイド業務を無事にやりきった安堵感とで、思わず涙があふれました。

同じように大変な時期を乗り越えてこられたお客様と、泣きながらハグで別れたのも、忘れられない思い出です。

そのご家族の小さなお子さまが、「この大人たちはなんで泣いてるんだろう?」と、不思議そうに見ていた光景も、今でも心に残っています。笑

そんな時期を経て、現在ありがたいことに忙しい日々を送るなかで、改めて思うのは、やはり「ヒトとヒトのつながり」に勝るものはない、ということです。

私自身、ガイドとしてだけでなく、幼少期・学生時代、そして客室乗務員時代を通して、さまざまな土地を訪れてきました。

そのなかで特に心に残っているのは、「どこで何をしたか」よりも、「誰と何をしたか」です。

AIが全盛の今、そしてこれからの時代においても、人とのふれあいから生まれる思い出に勝るものはないと、私は信じています。

都内庭園のガクアジサイ(左)、スイレン(中央)、花菖蒲(右)

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

Photo