インバウンドガイド日記 vol.13『梅桜桃~見分けられますか?~』

インバウンドガイド日記 vol.13『梅桜桃~見分けられますか?~』

2025年02月26日 10時01分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

ここ東京では朝晩の寒暖差はあるものの、日中は春のように暖かい日もあり、梅の便りも届くようになりました(2月中旬現在)。

先日、シカゴとダラスからお越しのご家族を日本庭園にご案内しました。

旅先の日本にて、久しぶりの再会を喜ばれている大家族の中に私も加わらせていただき、大変光栄でした。

園内ではまさに梅が開花し始めていて、甘い香りを漂わせていました。

今が見ごろの菜の花畑も、まるで黄色いじゅうたんのような絶景でした。

皆様、お顔をほころばせて美しい花々を楽しんでいらっしゃいましたが、歓声を上げ、嬉々として写真を撮っていたのは、主に4人の女性たち(プラス私で5人笑)でした。

お客様をご案内していると、今回に限らず、性別による「好み」の傾向は世界共通だなと感じることがよくあります。
住んでいる国や人種、年齢が違ったとしても、そして多様性を謳う現代でも、です。
universalな(普遍的な、世界中の、万人共通の)感覚を覚えるのです。

もちろん、個人差も大きいでしょう。

それでも、いちプライベートガイドとして少なからず日々実感しているため、なぜそのような違いがあるのか調べてみたところ、いくつか説があるようでした。

ひとつは、周囲の大人による子供たちへの働きかけの結果という説です。

車や電車を好むことが「男らしい」、人形やお花を好むことが「女らしい」と社会的に考えられているため、男の子は乗り物のおもちゃを走らせて遊ぶこと、女の子は人形と遊んだりお花を見て楽しむことが周囲から促された結果というものです。

もうひとつは、男女の生物的な差、ホルモンや脳の構造上の違いによるという説です。

乳児に人の顔と車の映像を見せたとき、男児は車を、女児は人の顔を見る時間が長かったという報告(Lutchmaya & Baron-Cohen,2002)もあり、かなり早期の段階から、ものへの興味の示し方には男女差があることがわかっているそうです。

胎児期にアンドロゲン(男性ホルモン)を過剰に浴びた女児は、男児のような遊びを好むケースが多いという報告もあるとのこと。

とはいえ、ホルモンや脳の構造が、それぞれの「好み」にどのように影響するかの仕組みそのものは、現在の科学ではまだ解明されていないようです。

小さいお子様を育てている方や、保育士や幼稚園教諭の方などは、日頃、肌で感じていらっしゃるかもしれません。

お客様との触れ合いの中で気づきや疑問があったときは、次のお客様との会話に活かせたらと思うこともあり、すぐに調べたくなります。

一種の職業病かもしれません。笑

それも私の日常のため、こちらの日記ブログにしたためさせていただきますね。

お客様と楽しんだ梅の花。ガイドが写真撮影に没頭するわけにはいかないので、いつも一撃必殺で撮影しています。笑


今日のひとこと

毎春、梅と桜そして桃が美しい花を咲かせます。
それぞれよく似た花ですが、多くの日本人はその咲く時期や、花弁の形、幹の色などで、見分けがつくことが多いでしょう。

でも、外国人の方は、どれもすべて桜だと思っていらっしゃることが多いんです。
楽しめればそれでよし、という考え方もありますが笑、もし、違いをご説明する機会があれば、以下のようにお話を膨らませられるでしょう。

This is a plum blossom, not cherry or peach. Plum blooms first, then cherry, and peach comes last.
これは梅の花で、桜や桃ではないんです。梅が最初に咲いて、次に桜、最後に桃が咲きます。

You can tell them apart by looking at the petals. Plum blossoms are round, cherry blossoms have a little notch, and peach blossoms are pointed.
花びらを見ると違いがわかります。梅の花は丸く、桜の花は先が少しくぼみ、桃の花はとがっています。

Plum trees have dark, smooth bark. Cherry trees are lighter and rougher, while peach trees are reddish and smooth.
梅の木は暗くてなめらかな樹皮です。桜の木は明るくてざらざらしていて、桃の木は赤みがかっていてなめらかです。

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左から、梅、桜、桃です。

ところで、「花見」といえば桜の花の鑑賞ですが、実は梅の花を愛でる風習が起源なのをご存知でしたか??

奈良時代の貴族が中国から伝来したばかりの梅を鑑賞しながら、歌を詠んだ行事が始まりといわれています。

桜は古来より日本人にとって神様が宿る神聖な木であって、鑑賞するというより、祭る対象だったようですね。

遣唐使の廃止により日本独自の文化が発展した平安時代に、桜が花見の主流となっていったようです。

早咲きの桜の便りも届き始めていますが、現代の主役「桜」が世間の注目を一身に集める前のひととき、いにしえの主役「梅」も存分に楽しみたいものです。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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