インバウンドガイド日記 vol.04『生卵~TKGは日本だけ?~』

インバウンドガイド日記 vol.04『生卵~TKGは日本だけ?~』

2024年12月25日 8時00分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

ご夫婦やご家族、ご友人同士だけで参加されているプライベートツアーでは、お客様とご一緒にお食事をする機会がとても多くあります。

案件をお受けした時から、ツアー予算にランチ分が含まれていて、「〇〇〇で△△△を食べるようにしてください」(浅草で天ぷらを食べる、など)と、エリアや具体的なレストラン、メニューが決まっていることもあれば、当日お客様とご相談の上、よさそうなレストランにお連れすることもあります。

突然ですが、私は食事もお酒もスイーツも、美味しいものを食べたり飲んだりすることが大好きです。笑

お客様から「日本人は皆んなとてもたくさん食べるのに、どうして痩せているの?太らないの?」とよく聞かれますが、気付いたらその質問をされなくなったということのないように注意しないといけません。

冗談はさておき、「食」は旅の楽しみの多くを占めると思うのです。

世界の都市のミシュラン星付きレストラン数トップ5のうち、3都市(1位:東京、3位:京都、4位:大阪)を占める我が日本(ドヤ気味)。

日本に住む私たちは、レストランでなくても日本の新鮮な食材を用いた食事を毎日楽しめるので、仮に人生80年として、1日3回365日食べたとしたら、約88,000回も楽しめるわけです。

一方、訪日外国人の皆様は、例えば2週間滞在した場合、ホテルで召し上がる朝食以外では、たった28回=(ランチ+ディナー)×14日しか、私たちの食事を楽しむことができないのです。

そう思うと俄然やる気が湧いてきます。笑

お客様からの
「サイコーだった!」
「今までの人生で食べた〇〇〇の中で一番の味だった!」
「昨晩行ったなかなか予約の取れない高級料理店より、Nori が連れてきてくれたこの店の方が断然美味しかった!」

というようなありがたいお言葉を養分に生きている私は入念に調査、準備します。

もちろん予算は度外視できませんし、お客様のアレルギーや宗教上の理由などにより食餌制限があったり、予約不可で長蛇の列を避けられない場合も多いです。

ツアーのメインの目的である観光や移動に使う時間や、周遊するエリアとの兼ね合いもあるので、毎回なかなか悩ましいのがお食事の場所選びです。

そしてお食事の場では、日本では一般的でも、海外の多くの方にとって馴染みのない食材や食べ方について、丁寧に説明して差し上げる必要があります。


今日のひとこと

すき焼きや卵かけご飯(TKG)などで使われる「生卵」もそのひとつでしょう。
なぜ日本では生卵を食することができるのかをご説明するとともに、試してみたそうなお客様にはそっと背中を押すように、そして困惑されているお客様には無理強いしないよう、優しくお声がけします。

Have you ever tried raw eggs before?
生卵をこれまでに試したことはありますか?

You don’t have to eat it if you don’t like it!
(食べたくなさそうな場合)苦手なら無理して食べなくていいですよ。

Have you ever tried 〇〇〇 before?” は、〇〇〇の部分を食べ物だけでなく、経験やアクティビティ、物事に置き換えて使うことができます。
日本で何か新しい体験や行動を試したかどうかたずねる時に使ってみてください。

なお、怪訝な表情をされているお客様に、“You don’t have to eat it if you don’t like it!” の後、
I’ll eat it for you! I love it!” と少し冗談っぽくお伝えすると、お客様も安心して笑顔を見せてくださることでしょう。実際に召し上がるかどうかのご判断は皆様にお任せいたします。笑

先日、最近見つけたお気に入りのお店で、ネバネバ丼を楽しみました。

アメリカからいらしたお客様たちは生卵を使わない別メニューを頼まれるかと思いましたが、私と同じ丼をオーダーされ、生卵だけでなく納豆デビューもされていました!

めちゃくちゃ美味しいと感激されていて、(私が料理したわけではないので恐縮ですが笑)お店にお連れしたことに対して感謝の言葉をいただけてとても嬉しかったです。

明治神宮の新嘗祭奉納品の画像とともに。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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