インバウンドガイド日記 vol.02『ロープウェイ~え!?通じないの??~』

インバウンドガイド日記 vol.02『ロープウェイ~え!?通じないの??~』

2024年12月11日 8時05分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

皆様は「箱根」を訪れたことはありますか?
天気に恵まれれば富士山を望むことができ、東京から2時間ほどで行ける人気の観光地です。

車での観光ももちろん楽しいですが、公共交通機関を利用すると、新幹線や特急列車、登山電車、ケーブルカー、ロープウェイ、海賊船、遊覧船、ローカルバス、、など、様々な乗り物を楽しむことができるので、乗り物好きにはたまらないかもしれません。

でも、私たち通訳案内士にとって、乗り物の説明が少し厄介なのがこの箱根。

「強羅から『ケーブルカー』に乗って早雲山まで行った後、『ロープウェイ』で大涌谷まで行きます」と英語でお伝えし、実際に乗り物に乗ったら、外国人のお客様は戸惑われるかもしれません。

なぜなら、「ケーブルカー」だけでなく、私たち日本人のいう「ロープウェイ」のことも ”cable car”(ケーブルカー)と呼ぶ外国人が多いのです。

ropeway”(ロープウェイ)という単語も使わないわけではありませんが少数派のようなのです。

つまり、路面を走っていようが、吊り下げられていようが、「ケーブル(鋼索)」で繋がれた車両をウインチ等で巻き上げて運転する乗り物は「ケーブルカー」と呼ぶのです。

日本では、「鋼索鉄道」だけを「ケーブルカー」と称することが一般的ですよね。

(なお、日本人でありながら「ケーブル」という単語しか知らず、「鋼索(こうさく)」という言葉を今まで知らなかったのは内緒の話です)

日本でいう「ロープウェイ」には ”cable car” の他にも、アメリカの地域によっては ”tram” なども使われ、スキーリゾートで見られる箱型のロープウェイは ”gondola” が一般的。

イギリスでも同じ単語を使いますが、観光地や山岳地帯では、特に ”gondola” がよく使われるようです。

そして、山間部を走る日本でいう「ケーブルカー」は、アメリカでもイギリスでも “funicular railway” や単に ”funicular” と表現したりするそうです。

国や地域によって様々な言い方があるとのこと、じゃあ結局どれを使えばいいの?となってしまいますよね。


今日のひとこと

そんな時は、「私たちはこれをロープウェイと呼んでいます。」
と言って、(日本でいう)ロープウェイの実物や写真を見せてから、ご説明してはいかがでしょう。

We call it a ropeway.
私たちはこれをロープウェイと呼んでいます。

その後、前回ブログのフレーズ
What do you call it in your country?
(あなたの国でこれは何と言うのですか?)

と続けたら、お客様が自国で使っている言葉を知ることができるでしょう。
We call it 〇〇〇.” は、〇〇〇の部分を、他の単語に置き換えられますので、日本ならではの物を説明したい時に便利です。

こんな文章を読んでしまうと、
「そうなんだ、実はあまりネイティブに使われていない英単語を使って恥をかいたら嫌だなぁ、、、」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。

でも、命にかかわる重要な場面や、商談の場などは別として、表現や意味合いの違いも(そして、もしかしたらヘンテコな和製英語までも!)外国人とのコミュニケーションを楽しむためのひとつのツールととらえて会話を膨らませてみてください。

今年の富士山の初冠雪は11月7日。
平年より36日も遅く、130年前の観測開始から最も遅い記録となったようですね。
上の写真はそれから10日後。降り続いた雨が止んだ朝方、ロープウェイの中から大きな虹を見ることができました。
終日、厚い雲に阻まれましたが本当に一瞬だけ富士山も姿を現してくれました!12月の今はさらに美しい雪化粧が進んでいることでしょう。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

Photo