インバウンドガイド日記 vol.26「テーマカフェ〜文化の違いを超えて〜」
2025年08月06日 5時00分
年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?
日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

観光地をご案内する中で、「ぜひこのカフェに行きたい」とリクエストをいただくことがあります。
コーヒーやスイーツを楽しむ一般的なカフェはもちろんですが、なかには「テーマカフェ」や「コンセプトカフェ」と呼ばれるユニークなお店にご案内することもあります。 とくに人気があるのは「メイドカフェ」や「動物カフェ」です。
Concept cafés, also called theme cafés, are based on a specific theme, like anime or fantasy.
コンセプトカフェは、アニメやファンタジーなど、特定のテーマに沿って作られたカフェで、テーマカフェと呼ばれることもあります。
In maid cafés, staff wear maid costumes and interact in a friendly and playful way.
メイドカフェでは、スタッフがメイド服を着て、親しみやすく遊び心のある接客をします。
Animal cafés let visitors spend time with animals like cats or owls.
動物カフェでは、猫やフクロウなどの動物とふれあうことができます。
このような場所は、多くの場合、お客様からの強いご希望で訪れるため、楽しんでいただけることが多いです。
でも、ときには強くカルチャーショックを感じる方もいらっしゃいます。
たとえばメイドカフェでは、ご家族のお子様は大喜びでも、お父様が「なんなんだこれは…」という表情で固まっていらしたり、娘さんと同じ年頃のメイドさんを見て、思わず「この子たちは熱狂的なお客様から危険な目に遭ったりしないのかしら」と心配されるお母様もいらっしゃいました。
また動物カフェに関しても、「とても癒された」とおっしゃる方がいる一方で、「動物がかわいそう」と感じる方もいます。
先日、原宿の動物カフェの前で、年配の外国人女性が「自分の国ではこんなこと、絶対にありえない!」と強い口調で非難しながら、周囲の人々にその意見を伝えて回っている場面に出くわしました。
その場を離れたあと、ご一緒していたお客様にどう感じられたかをうかがったところ、
「たとえ文化が違っていても、頭ごなしに否定するのはよくないと思う」と話してくださり、私も深く共感しました。

今日のひとこと
自分の感想や意見を持つことは大切ですが、それを周りの人に押しつける必要はないと感じたからです。
もちろん、動物福祉に関しては、さまざまな意見や価値観があるのが自然です。私にも、思うところがないわけではありません。
あの年配の女性も、日本にこうした文化がある理由や、これらのお店が近年は日本人以上に外国人観光客から支持されているという背景をご存じなかっただけのかもしれません。
Japanese people love carefully designed, immersive experiences, so cafés with detailed themes are very popular.
日本人は細部まで作り込まれた没入型の体験を好むため、テーマ性の強いカフェがとても人気なんです。
In big cities like Tokyo, many people can’t keep pets, so animal cafés became a place to relax and spend time with animals.
東京のような大都市ではペットを飼えない人も多いため、動物カフェが癒しの場所として人気になりました。
These days, many cafés have more foreign visitors than Japanese customers.
最近では、日本人よりも外国人のお客様のほうが多いというお店も少なくありません。
Most cafés are kept clean and hygienic for the animals’ health.
動物たちの健康のために、ほとんどのカフェでは店内が清潔かつ衛生的に保たれています。
Staff make sure the animals are not overworked or stressed.
スタッフは、動物たちが働きすぎたり、ストレスを感じたりしないように常に気を配っています。
私自身、海外を訪れた際には、たとえ自分の国にはない文化や価値観に出会っても、まずはその背景を知ろうとする姿勢を大切にしたいと思っています。
そしてそのうえで、自分の中で賛否を考えることができたら理想的です。
インバウンド対応でも同じことが言えるのではないでしょうか。
驚いたり、違和感を覚えたりすることがあったとしても、「なぜそうなのか?」という背景を知れば、見え方が変わることもあります。
文化の違いを超えて、少しでも心地よい時間をご提供できたら——
それが本当のおもてなしだと私は思います。


記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)
全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント
