インバウンドガイド日記 vol.19『日本らしさ~細部へのこだわり~』

インバウンドガイド日記 vol.19『日本らしさ~細部へのこだわり~』

2025年04月30日 8時53分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

桜前線もすっかり北上し、東京ではつつじや藤の花が見ごろを迎えています。

ついこの前、新年度が始まったと思ったら、もうゴールデンウィーク。本当に早いですね。

仕事柄、外国からのお客様に「日本らしさ」をご紹介する機会が多くありますが、「日本は細部へのこだわりがすごい!」という驚きの声から会話が広がることもよくあります。

なぜ私たちが細部にこだわりがちなのかは、文化や歴史、宗教観、社会構造など、さまざまな要因が関係しているといえるでしょう。


今日のひとこと

そんな日本の「細部へのこだわり」については、こんなふうに説明できるかもしれません。

We tend to pay attention to detail.
私たち日本人は細部にこだわる傾向があります。
※ ”pay attention to” は直訳すると「注意を払う」ですが、「心を向ける」「こだわる」という意味でも自然に使われます。

It may be because of our love of harmony with nature, craftsman traditions, group-mindedness, seasonal awareness, and the way we’re brought up at home and at school.
それは、自然との調和を大切にする心や職人の伝統、集団を意識する文化、季節の移ろいに敏感な感性、そして家庭や学校での育てられ方が背景にあるのかもしれません。

Even everyday things are beautifully designed.
日常的なものでも、美しくデザインされています。
※ “even” は「〜でさえ」「〜までも」と意外性を強調する単語。驚きが込められています。

In Japan, you might notice that even manhole covers are artistic.
日本では、マンホールの蓋まで凝ったデザインになっていることに気づくかもしれません。

It may seem surprising, but even deli food is carefully presented.
驚くかもしれませんが、お惣菜でさえ丁寧に盛りつけられています。

The designs often reflect the seasons or local culture.
デザインには季節感や地域の文化が表れていることも多いです。

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海外セレブにも大人気のデパ地下は、私たちの「細部へのこだわり」の権化といえそうです。笑

ギフト用はもちろん、日常のお惣菜までもが美しくディスプレイされ、季節や行事を反映したパッケージや店内装飾も凝りに凝っています。

ちょっとした買い物でも、綺麗な包装紙でササッと包んでくれることに驚かれる海外の方も少なくありません。

環境への配慮という観点では課題もありますが、旅先の光景としてはお客様に喜ばれることが多いです。

端午の節句を祝う柏餅(左)と、美しく並べられた高級いちご(右

他にも、街中で見かけるマンホールの蓋は象徴的な存在で、もはや芸術の域と言っても過言ではありません。

繊細に施されたデザインに感動されることも多いです。

日本で初めてデザインマンホールが登場したのは1977年。

当時の建設省が、下水道事業への関心を高めようと始めた取り組みがきっかけで、那覇市から全国へと広がっていったようです。

東京都(左)と富士河口湖町(右)のマンホールの蓋

ちなみに私は、最近よく見かけるキャラクターを描いたカラフルなマンホールよりも、景観に溶け込みつつ、よく見るととても凝ったデザインのものが好きです。

なお、最近では英語圏において、’manhole’ という言葉が持つジェンダー的なニュアンスを避け、“utility cover” や “maintenance hole” など、より中立的な表現を使おうとする動きも見られます。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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