インバウンドガイド日記 vol.18『音~旅の魅力とは!?~』

インバウンドガイド日記 vol.18『音~旅の魅力とは!?~』

2025年04月16日 8時00分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

海外からのお客様に指摘され、
「あぁ、これは私たち日本人にとっては日常だけれども外国の方にとってはそうではないのだな」
と気づかされることはとても多いです。
例えば”“。

都内では、JR、私鉄ともに多くの駅で発車メロディが鳴ります。

駅ごとに、そして、上り下りで別のメロディが流れることも珍しくありません。

また、街中で横断歩道を渡るために待っていると、視覚障がいの方のため、鳥のさえずりや童謡のメロディなどで、青になったことを知らせてくれる信号が数多くあります。

(調べてみたところ、都内の信号機全体に占める音響式信号機の割合はおよそ17%だそうです)

なお、都内の横断歩道で聞こえる「鳥のさえずり」には、視覚障がいのある方が方向を判断しやすいよう工夫がされているそう。

たとえば、東西方向の道路(例:青梅街道、甲州街道)では「ピヨピヨ」、南北方向の道路(例:山手通り、環七通り)では「カッコー」の鳴き声が使われているのだとか。

初めて知ったときは、その工夫に思わず感心してしまいました!


今日のひとこと

外国からいらしたお客様やお友達が、駅や信号の「音」に反応して物珍しそうにしていたら、以下のように説明できるでしょう。

A melody plays before the train doors close.
電車のドアが閉まる前にメロディが流れます。

In Tokyo, some signals make bird sounds for people crossing the street.
東京では、横断歩道を渡る人のために、鳥のような音を出す信号もあります。

The sound helps people who can’t see well.
その音は、目がよく見えない人の助けになります。

The chirping / cuckoo sound means you can cross the road that goes east to west / north to south.
小鳥(カッコー)の鳴き声は、東西(南北)に走る道路を横断できるという合図です。
※「カッコー」は英語でもそのまま cuckoo(発音:ククー)で通じます。


日本各地、外国人観光客で賑わっています。

わずか2年前までの3年超、コロナ禍で訪日客をお迎えできなかったことが嘘のようです。

当時、すべてのガイド業務が消滅した身としてはとても嬉しく、ありがたい限りです。

ただ、賑わいを通り越して、いわゆるオーバーツーリズムとなっている観光地も少なくないようです。

私たちプライベートガイドは、ありきたりでない特別な時間をお客様にご提供できるよう、日々、リサーチや下見に余念がありません。

しかし現在では、SNSにより瞬時に全世界に情報が駆け巡るため、Hidden gems(「隠れた宝石」から転じて「穴場スポット」の意)と言われる場所にご案内することは年々難しくなっています。

苦労して見つけ出したとっておきの場所であっても、数か月後、別のお客様をご案内すると、多くの訪日客で溢れかえっていたりします。泣

日本は大変人気の旅先となっていますが、そもそも「なぜ人は旅をするのか」という根源的なことを考えてみると、「新しい体験をしたいから」「日常から離れてリフレッシュしたいから」「美しい景色を見たいから」「異文化に触れたいから」「美味しいものを食べたいから」「自分を見つめ直したいから」など、人それぞれ様々な答えがあるかと思います。

しかし、どの答えも土台には、味覚・視覚・聴覚・嗅覚・触覚といった「五感に訴える」体験を求めているのではないかと思うのです。

「五感を満たす特別な時間を得られること」が旅の魅力と言い換えられるかもしれません。

「音」の話でいうと、居酒屋で店員の皆さんが口々に言う「いらっしゃいませ~!!!」の声も独特に感じるようで、「大声で何をシャウトしているの?」と聞かれたりします。笑

オーバーツーリズムの問題などがありつつも、日本が人気の旅先として選ばれているのは、海外の方たちにとって「五感を満たすモノ・コト・トキ・ヒト」が溢れている国なのだろうととても光栄に思います。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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