インバウンドガイド日記 vol.15『本音と建前~日本人だけではないんです~』

インバウンドガイド日記 vol.15『本音と建前~日本人だけではないんです~』

2025年03月12日 9時00分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

本音と建前」という言葉、日本人や日本文化の特徴として使われますよね。

Honne and tatemae” として、英語や他言語でも表現されているようです。

Wikipediaには「何かしらに対する人の感情と態度との違いを示す言葉。
しばしば日本人論に見出される言葉でもある」とあり、やはり日本を理解する上で欠かせない概念のようです。


今日のひとこと

でも、本心を明かさず異なったことを言うのは、何も私たち日本人だけではありません。
英語でも、相手を慮る遠回しな言い方、「本音」を言わず「建前」を言う婉曲的な表現が存在します。
小売店やレストランなどで、外国人のお客様から以下のように言われたとしたら、言外の意味があるかもしれません。
言葉だけでなく、声色やボディランゲージ、雰囲気などからも、お気持ちを汲み取るようにするとよいでしょう。

This is really nice! I’ll think about it.
これ、本当に素敵ですね!考えてみます。
※「買うつもりがない」と直接言わずに表現する際に使われることがあります。

That’s a great quality item!
とても質のいい商品ですね!
※値段が高く感じるとき、「高い」と直接言わずに、「買うかは別の話」として褒めています。

I’m just browsing, thank you!
ちょっと見ているだけです、ありがとう!
※「自分に構わないでほしい」と店員にやんわりと伝えています。
I’ll let you know if I need anything.(何かあれば声をかけますね)も同様です。


It’s an interesting taste!
ユニークな味ですね!
※食べたものの味が期待と違って微妙でも、ポジティブに表現しています。
I’m glad I tried it!(試せてよかったです!)も、本音はともかく前向きな感想を表しています。


It looks like a busy day!
今日は忙しそうですね!
※サービスが遅いと感じたとき、直接クレームせずに「なぜこんなに遅いのか?」という気持ちを表現しています。

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「社交辞令」も、特にビジネスの場などで用いられる表現ですが、どちらも「本心」を言わないことが共通しています。

本心を言わないというと一般的に良くないイメージですが…

本音と建前」や「社交辞令」の概念は、円滑な人間関係を築くため、会話や場の雰囲気を壊さずに、相手への配慮や同調を示す手段として、日本人のコミュニケーションにおいて重要視されています。

日本人であれば誰もが実感していることだと思います。

海外からいらしたお客様とお話ししていると、日本人全般について、本当によくお褒めの言葉をいただきます。
というより、褒めちぎられます。

いつも皆様を代表して、お褒めの言葉をひとり占めさせていただきスミマセン…笑

もちろん、これを外国人の「建前」と言ってしまえばそれまでです。

ですが、日本人は子供のころから「周りの人の顔色を窺い」、「空気を読み」、「同調する」文化の中、生き抜いてきた、いわば「察し」のエリートだと思います(良い意味でも悪い意味でも)。

なので、たとえ外国語をうまく操れないとしても、よそからいらした方をもてなす術にはとても長けているのではないかと思うのです。

私たちが持つ特性は長所として、これからも磨き上げていきたいですね!

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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