インバウンドガイド日記 vol.12『ハンコ~日本人のDNA~』

インバウンドガイド日記 vol.12『ハンコ~日本人のDNA~』

2025年02月19日 8時00分

年々増加傾向にあるインバウンド観光客。
皆さんも街中で訪日外国人を見かける機会はありませんか?

日本人同士の気持ちはわかるけれど、世界各国の人の常識や思いを理解することはなかなか難しいですよね。
そこで、日々インバウンドとともに日本を旅する’全国通訳案内士’が実際にあった体験をもとにお話しします。

最近、「ハンコ」を使いましたか??

例えば、宅配便などはサインでも問題ないだけでなく、宅配ボックスや置き配などの非対面での受け取りも日常になっています。

ビジネスの現場でも、日々の決済はオンラインで完結して、リアルな印鑑を目にする機会は限られているのではないでしょうか。

コスト削減や生産性向上などのメリットが期待できるとして、世の中、印鑑の廃止、電子化が進められていますよね。

とはいえ現在でも、不動産の売買、自動車の購入、遺産相続などの重要な場面では、印鑑登録を済ませた実印が必要です。

ちなみに、ハンコ文化の発祥地、中国では既に印鑑制度は存在せず、現在もハンコを使用して契約を締結する国は、世界でも日本くらいのようですね。

先日、お客様をお迎えに行ったところ、ご滞在先の近くにこんな可愛いシートが置いてあるスタンプ台がありました。

そう、ドラゴンクエストのスライムです。

日曜日ということもあり、スタンプを求めて長蛇の列でしたが、カリフォルニアからお越しの9歳の男の子も初めて遭遇したスタンプラリーに大興奮でした!

はるか昔、大学受験前の最も勉強しなくてはいけない時期に、(大学生で時間がたっぷりあった)兄に負けじと毎晩夜中までドラクエをしていた思い出があります。

ドラクエの魅力のせいで受験勉強がおざなりになったことは今も悔やまれてなりません。笑

昔話はさておき、、こういったイベント的なものだけでなく、日本中、駅でも商業施設でも観光地でも、それこそあらゆるところでスタンプ台を見かけますよね。

実はこれ、外国人のお客様に好評なんです

海外にもなくはないようですが、日本のように津々浦々に配されている国は珍しいようで、お子様だけでなく、大人の方々も嬉々としてスタンプを押されたりしています。

どこからか噂を聞きつけて、スタンプ用にと、お気に入りのノートを自国からわざわざ持ってきたお子様もいらっしゃいました。

そして、日本ならではの「ハンコ文化」で外せないのは、なんといっても「御朱印」ですよね

少し前に「御朱印ブーム」と言われた現象がありましたが、今も多くの日本人が御朱印を集め続けているようです。

このブーム、2000年代から広まったパワースポットブームや、2013年に伊勢神宮の「式年遷宮」と出雲大社の「平成の大遷宮」が重なった「ダブル遷宮」がきっかけではないかと言われています。

今では、多くの海外の方々も、日本各地で御朱印を集めていらっしゃいます

御朱印の起源ははっきりとわかっていませんが、日本全国66ヶ所の霊場を巡る修行者があらわれた、鎌倉・室町時代頃に遡ると言われています。

これらの修行者たちが、巡礼先の寺院でお経を納めた証として、「納経印(のうきょういん)」を頂いたことに由来するようです。

ご存知の通り、基本的に仏教では、功徳を積む(善い行いをする)ことで極楽浄土へ行くことができると考えられています(宗派により異なります)。 そのため地域によっては、人が亡くなった際、「功徳の証」として棺に御朱印帳を収め、仏様に極楽浄土へ行けるようにお願いする風習があり、今も行われているそうです。


今日のひとこと

そのような、宗教的な場面にも深く関わる、日本の「ハンコ文化」。
今後、ビジネス上の効率化を考えると、印鑑廃止一択でしょう。
でも、私たち日本人のDNAにはハンコに対する愛着が刷り込まれていて、文化的な面では決して葬り去ることはないだろうと思います。

ハンコについて外国人にシンプルに伝えたいときは、以下のように表現できるでしょう。

In Japan, we often use personal seals called “hanko” instead of signatures.
日本では、署名の代わりに「ハンコ」と呼ばれる個人の印鑑をよく使います。
※We often use 〇〇〇 called “△△△” instead of □□□. で、日本特有のものを海外の文化と比較して表現することができます。

Some important documents, like real estate contracts, still require a physical seal.
不動産契約のような重要な書類では、今でも実際の印鑑が必要です。

Many tourists enjoy collecting stamps at shrines and temples, called “goshuin”.
多くの観光客が、神社やお寺で「御朱印」と呼ばれるスタンプを集めるのを楽しんでいます。

You can find stamp stations at many tourist sites, train stations, and even at some events!
観光地や駅、イベント会場でもスタンプ台を見つけることができますよ!

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そして最後に、(久しぶりの笑)今まで知らなかった「日本語」シリーズです。

ハンコは「個人や組織がその当事者であることを証明する印(しるし)のこと」で、「切り口が円形、楕円形、角型などで、全体は棒状をしているもの」のことだそう。

ふむふむ、、イメージ通りです。

一方、印鑑は「捺印をした時に紙や書類などに残る文字や絵のこと」。つまり、厳密には「印影と呼ばれるものと同じ」意味なのだそうです。驚!

英語どころか日本語も、まだまだ知らない知識が沢山あるなと思わされます。

記事執筆者
田口 倫子(たぐち のりこ)

全国通訳案内士(英語)
観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」1級講師
観光庁「世界水準のDMO形成促進事業」外部専門人材
元JAL国際線キャビンアテンダント

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