英語の多読でリーディング力を劇的に伸ばす!効果・ルール・レベル別おすすめ本を徹底解説

英語の多読でリーディング力を劇的に伸ばす!効果・ルール・レベル別おすすめ本を徹底解説

2025年05月12日 4時27分

英語の多読とは?

みなさんは、「多読」という英語学習法を聞いたことがありますか。外国語を学ぶには、「量」に触れることが大切ですが、“読む”ことで「量」を確保するのが「多読」という学習法です。単にたくさん読むのではなく、読み方にポイントがあります。

本記事では、多読の時の基本的なポイントから、教材選びのポイント、実際におすすめの教材や多読の効果について解説します。

目次

読み方の基本のポイント

まずは読み方のポイントを3つに絞ってご紹介します。

1.辞書を引かないこと

辞書を引いていると、読書がその都度中断されてしまい、時間がかかるだけでなく、
・すぐに意味がわかるが、忘れるのも早い。
・辞書の意味と1対1で照らし合わせるので、その単語の持つ意味を十分に理解できないことがある。
といったデメリットがあります。

「多読」の単語獲得の方法は、私たちが母語を獲得するステップと似ています。

「多読」のメリットは、すべての言葉が、物語の“文脈”の中で登場することです。受験勉強などで単語を覚えるときに、例文と合わせて覚えると記憶に残りやすかったりしますよね。

Aという知らない単語があったときに、

 状況1で「A」が出てきた。
 状況2で「A」がまた出てきた。
 状況3で「A」がさらに出てきた。
 ということは、「A」はおそらく、こういう意味ではないか・・?

ここまで自分の頭で推測ができるまでは、なるべく辞書を引く誘惑に耐えましょう。

そうすることで、「A」の意味は、数々の利用例から、自力で理解できたも同然です。この段階で、満を持して、いわば答え合わせのように辞書を引くのがオススメです。

この方法は、時間はかかりますが、たくさんの利用例の中で、その単語の持つ意味が、いわば“立体的”に把握できているため、記憶の定着度が圧倒的に深く、忘れることがありません。辞書を引くと、1つの単語について、意味がたくさん載っていることも多いですが、それを丸暗記ではなく、自然に理解できるというわけです。

“まず大量にその言葉に触れる”⇒“その言葉の意味がわかるようになる”

という、謎解きのようなプロセスを、ぜひ楽しみましょう!

2.日本語に訳さないこと

「多読」で効果をあげるためには、①に示したように、ともかく大量の英語に触れて、頭の中に、その語や言い回しが使われている用例をたくさんインプットする必要があります。そのためには、読むスピードを落とすことは避けなければなりません。いちいち日本語に訳していると、時間がかかるのと、日本語の技術も必要になり、英語を吸収することに集中できません。

わからないところは思い切って飛ばし、“英語を英語のまま理解する”脳の回路を作ることが、「多読」学習のポイントです。その意味では、“わからないことに耐える”力を身につけるのが、多読学習の最大のポイントと言えるかもしれません。

3.自分のレベルより、少し易しい本を読むこと

日本語でも、1つの文を読むときに、わからない単語が複数あったり、堅苦しすぎる言い回しの文章だと、文の意味を理解するのに苦労することでしょう。言語を学ぶときに、未知語(知らない単語)がどのぐらい含まれている文章を読むのが適切かは、多くの研究が行われていますが、多読においては98%ぐらい(50語に1語ぐらいわからない単語が出てくる)のテキストを選ぶのが適切と言えそうです。

その意味では、多読のとっかかりとしては、日本語ですでに知っているお話を題材に選ぶのもオススメです。知っている語の割合が少し低くても、お話自体を知っているため、過去の記憶から類推できるためです。

また、多読のスタートに絵本がよく使われるのも、同じ理由によります。絵本は、日本語でもそうですが、絵の中に情景が描かれ、それとセットで言葉の意味を自然に理解できるようになっています。

ただし、日本語では易しくて親しみのある物語でも、原書が出版されたのが古く、読みづらい英語で書かれていたり、方言や独特の語り口で書かれていたりと、意外と難しい場合もありますのでご注意ください。その場合は、いったんその本は置き、レベルが上がってからまた挑戦してみるのもよいでしょう。

多読の一番の原動力は、自分が読んでいて楽しい本を選ぶことではあるため、「難しくてもどうしてもこの本を読みたい!」という場合には、挑戦してももちろん構いませんが、難易度とのバランスを取って本を選んでいくことは、ポイントとなります。

多読と精読の違い

なお、多読に対して、「精読」という読み方の手法があります。こちらは、多読とは真逆で、一文一文の文構造や単語の意味をていねいに理解しながら読むことを指します。どちらの学習方法が良いということではなく、学習の目的や段階によって、両方をミックスしながら学習することで、英語学習の効果を最大限に上げていくことができます。多読の「量」に対して、精読は「質」の読み方と言えるかもしれません。

次のセクションでは、具体的な本の選び方のコツについて解説します。

教材の選び方6つのポイント

「多読」をする上で、本の選び方のポイントを改めてまとめます。

<ポイント①>LRやGRを活用する

「多読」する本は、98%が理解できる単語で書かれているものが最適とお伝えしましたが、その本の難易度が予めわかる指標として、「LR(Leveled Readers)」と「GR(Graded Readers)」という、多読学習専用のシリーズの本があります。

LRとは、英語を母語とする児童向けに書かれた本です。「Oxford Reading Tree」という、キッパーくんという男の子が出てくるシリーズなどが有名です。「Oxford Reading Tree」は薄い冊子が数十冊セットになったもので、1冊ずつはどんどん読み終わるため、“英語の本が自力で読めた!”という達成感が味わえます。もちろん英語学習用に大人が読んでもまったく差し支えありませんが、元は低年齢の子どもたちが読むことを想定して作られた本です。

一方GRは、英語学習者用の段階的な読み物になります。「Penguin Readers」などがメジャーです。英語学習者用に使用語彙がコントロールされているため、語数が増えても読みやすいことがポイントです。中学生以上の学習に適しています。

<ポイント②>語数表示を目安にする

LRやGRには、「語数表示」があります。LRでは1冊50語程度から、GRでは100語程度からの本がそろっています。

語数の目安は以下の通りです。

文字数と教材効果
500-1000語のGR中高生の多読学習に最適。無理なくスタートして、読むスピードを上げていくのが望ましい。
約10,000語~30,000語程度のペーパーバックティーン向けの小説や薄めのビジネス書など一番少ないものが10,000語程度。
約200,000語 『ハリーポッターと賢者の石』 英語学習者が“いつかは読んでみたい!”と言うことも多い『ハリーポッター』シリーズは、日本語でも分厚い本なのと、内容的にもファンタジー作品で凝った語彙や言い回しも多いので、最高峰の目標として取っておくのがよいかもしれません。

<ポイント③>背景知識のある読み物を選ぶ

どの本を選ぶべきか、語数以上に難易度を左右するのは、そのお話を知っているかどうかです。映画の原作や、日本語で読んだことのある小説の原書などなら、少し語数が多くても理解の進みが早く、何よりも“そのお話を原書で読みたい!”という気持ちが原動力となるため、多読学習には適していると言えるでしょう。

<ポイント④>飽きたらやめる

日本語でも、読み始めたら思ったほど面白くなかった、思っていた内容と違った、なぜか読みづらい、という本の場合は、ムリして最後まで読み通さなければならないということはありません。英語学習も同様、より学習効果を上げるためには、自分が内容に興味が持てて、読みたいと思える本で学習を進め、量をこなしていくのが一番です。思い切って区切りをつけ、他の本に移ったり、難易度を下げるなどしてみましょう。

<ポイント⑤>オーディオ付きの本を活用する

多読をする上で、音声は必ずしもセットである必要はありません。「多聴」と「多読」は、どちらも量をインプットする上で非常に効果的な学習法ですが、同時に行うというよりは、聴くときは聴く、読むときは読む、で、それぞれのスキルを上げていくので十分に有効です。

しかし、これらに相乗効果がないという訳ではもちろんなく、目安として、5,000語以上レベルの本がスムーズに読めるようになった時に、より易しい本をオーディオ音声で聞くと、英語を聞くのが楽になっていることでしょう。以前はCD付きの書籍も多かったですが、最近はネット上で音源データをダウンロードして聴けたり、多読・多聴専用のライブラリサイトもありますので、ぜひ活用してみてください。

レベル別におすすめの本

具体的な図書名もご紹介します。自分のレベルに合う中から興味の持てる本を自由に選びましょう。

入門レベル(目安:TOEIC ~345点/英検5~4級) におすすめの本

LRやGRの、100語程度の薄い本がオススメです。絵本に近い体裁で、イラストの助けも借りて、意味を類推することができます。フォニックス(英語の文字と音の結びつきを学ぶ学習)の観点で、出てくる語彙がコントロールされているシリーズなどもあります。薄いので、完全にわからなくてもどんどん冊数をこなし、「英語で本が読めた!」という達成感を味わうことができます。

初級レベル(目安:TOEIC 350~495点/英検3~準2級)におすすめの本 

タイトル文字数参考
“The Tale of Peter Rabbit”
(邦題:『ピーターラビットのおはなし』 著者:ビアトリクス・ポター)
シリーズそれぞれ1,000語程度イギリスの湖水地方に住むウサギたちの物語。
“Frog and Toad Are Friends”(邦題:『がまくんとかえるくん』 著者:アーノルド・ローベル)シリーズそれぞれ2,000語程度小学生の国語の教科書にも取り上げられている名作です。著者の朗読による音源も聴けるようです。
” A Christmas Carol “(邦題:『クリスマス・キャロル』 著者:チャールズ・ディケンズ)原書は1万語レベルですが、2千語レベルの縮約版でも読めます。古典の名作ですが、ディズニーがCGアニメーション映画化もしたことで広く知られる作品。

中級レベル(目安:TOEIC 500~725点/英検2~準1級)におすすめの本 

“Charlotte’s Web” (邦題:『シャーロットのおくりもの』 著者:E.B. ホワイト)

 映画にもなった児童文学の名作です。子豚のウィルバーとクモのシャーロットの冒険物語。ペーパーバックの中では3万語程度と読みやすく、単語や文法も平易です。児童文学の古典はイギリスの作家によるものが多いですが、こちらはアメリカの作家の作品であることも、日本人学習者には読みやすくオススメです。

“Charlie and the Chocolate Factory”(邦題:『チャーリーとチョコレート工場』 著者:ロアルド・ダール)

こちらも映画化もされた有名なお話です。3万語程度で英文も比較的平易です。

” Little House in the Big Woods “(邦題:『大きな森の小さな家』 著者:ロ-ラ・インガルス・ワイルダ-)

過去にTVドラマシリーズにもなった、アメリカ開拓時代の一家の生活を描いた物語。こちらも3万語程度と読みやすく、ペーパーバックへの挑戦の第一歩としてオススメです。

上級レベル(目安:TOEIC 730~900点/英検準1~1級)におすすめの本 

“Harry Potter and the Sorcerer’s Stone” (邦題:『ハリーポッターと賢者の石』 著者:J.K. ローリング)

20万語のボリュームに加え、造語やハリーポッター独特の固有名詞が多いため、難解とされていますが、それも含めて原書で味わう醍醐味があります。

“Wonder”(邦題:『ワンダー』 著者:R.J.パラシオ)

映画化もされた、アメリカのティーン向け小説。7万語レベル。本格的なペーパーバック且つ、古典文学ではなく最近の作品を読みたい人にオススメ。1章ずつが数ページで短く、読み進めやすい。

多読をすることで得られる効果

圧倒的な“英語の使用例”が頭の中に蓄積される

多読の最大のメリットは、単語や文型などを、実際に使われているコンテキスト(文脈)の中で圧倒的に大量に触れて吸収できることです。これにより、“自然な英文”や、ある場面において“適切な語彙、言い回し”などが、理屈ではなく自然にわかるようになります。これは、単語帳で語彙を増やしたり、文法の参考書で規則を覚えたりする「積み上げ式」の学習法の、いわば対極にあるものです。英語の思考回路とでも言うべきものが、頭の中に作られていきます。

単語帳や文法書での学習が悪いわけではなく、大量の事例から学ぶことと、それがまとめられたルールを学ぶことの、両方ともメリット/デメリットがあります。自分に合った学習スタイルで、その時々の目的に応じて、組み合わせて学ぶのが最適と言えるでしょう。

リーディングのスピードが上がる

これは当然ではありますが、問題集などで長文読解をていねいに読んで解くのとでは、圧倒的にこなす“量”に違いがあります。何冊もの本を読み通す過程で、ある程度のスピードと、前述の“わからないことに耐える”力や“わからなくても類推する力”が養われるため、多読の学習者は、リーディングのスピードが上がることが期待できます。

リスニングにも効果がある

多読を行うと、当然読むスピードは上がりますが、このことはリスニングにも効果があります。読んで理解できない英文は、聴いても理解できません。リスニングは、音声が流れるそばから消えていくため、着実に英語の語順で理解することが求められます。読めるようになれば、あとは音声に慣れるだけと言えます。

一人で読むことに飽きたら(アウトプット)

オンライン英会話で講師に要約を言ってみる

『フリートーク』や『トピックトーク』の「趣味」の「読書(Reading Books)」で、講師に読んでいるストーリーについて伝えてみましょう。講師も、その本を読んだことがあったり、他の本を教えてくれるかもしれません。

音声教材や映画版を見てみる

多読学習をしている人の頭の中には、たくさん語彙や言い回しがストックされていきます。そのような、“読んでわかる言葉”に今度は音声で出会うと、その言葉の記憶がさらに深いものになり、確実に身についたと言える知識になることでしょう。

小学生や小学生以下の多読

お子さま自身が読み進めるには、入門レベルのLRやGRのテキスト、絵本をオススメします。この段階では、内容よりも、“英語の本が読めた!”という達成感を優先したほうが、もっと読みたいという気持ちにつながります。限られたフォニックスの文字だけで読めるシリーズなども役立つでしょう。

おすすめの絵本 3選

ドクター・スースの絵本 

独特な絵と韻を踏んだ楽しい文章で、英語の音とリズムの楽しさに触れることができます。読み聞かせに最適です。

エリック・カールの絵本

『Brown bear, brown bear, what do you see?』など、カラフルで美しい絵とリズミカルな文章で、読み聞かせに適しています。

ハロウィーンの定番絵本

『Go Away, Big Green Monster!』(エド・エンバリー)読み聞かせはもちろん、体の部位の単語など、お子さまが読むのに挑戦するのもよいでしょう。

原書に触れてみるという点では、小学生に人気の『グレッグのダメ日記』の原書(『Diary of a Wimpy Kid』ジェフ・キニー著)なども、開いてみるとよいかもしれませんが、お話の雰囲気そのままに、手書き風のフォントで書かれていることと、現地の子どもたちの日常のくだけた表現がそのまま使われているため、やや読みにくいかもしれません。お気に入りのチャプターだけ抜き出して読んでみるなど、多読とはまた違った切り口で触れてみるのは、現地の雰囲気を感じる上で、お子さまが興味を持てれば大いにオススメです。

好きな本を見つけて始めてみよう!

多読は時間はかかりますが、 “急がば回れ”で、一度ついた読む力は失うことはありません。速く読めることは、受験や資格試験、ビジネスでの情報収集や処理など、すべてにおいてアドバンテージです。最近は、タブレットで読むことも可能になり、多読に挑戦する環境は飛躍的に整ったと言えます。ぜひみなさま挑戦してみてください!